こっちに少しずつ近寄ってきます。全身黒の服装でしたが、首には赤い宝石がついたチョーカーをつけていました。

少年は少女の額に銃を突き出しました。

「お前の大事な物はなんだ?」

細く凛とした声でした。でも、発する言葉のひとつひとつに力を入れているような感じです。

少女は答えませんでした。というよりは答えられませんでした。大事な物なんて特になかったからです。