帰りの空を見上げてみると、空は気持ちの悪いほどの青から、どす黒い灰色に変わっていきつつあった。

けれど、雨が降り出しそうな気配はなかった。

僕には、かの有名なイカロス様が飛んだ空と同じものには到底見えなかった。

きっと、イカロス様もその時の空模様がこんな曇っていたならば、脱獄も考えなかっただろうし、空を高く飛びすぎることもなかった。

晴天は誰にでも幸せをもたらすとは限らないってことだ。

イカロス様の気分にそぐわなかった空を、僕は想像する。

カバに似た色の空。

ネズミに似た色の雲。

白と黒のコントラストを穿き違えた世の中。

言い方なんてのいうのは言葉の数だけあるんだ。つまり無限だ。

けれど、その無限の中にもきっと、ピッタリなのがある。ベストという言葉が良く似合うものが。

その空は……葉山らしい、中途半端な空だったんだ。

そう、まさに、この時のように。