中に入ると紅卯月はまた余所見もせず歩いて行った。

しかし青羽は辺りをキョロキョロと顔を顰めながら見ていた。

ずらりと並ぶその`檻'には老人から若い者まで居て
独り言を呟く者や寝ている者もいた。

どんな経歴を経て此処に入っているのだろうと少し考えていた。


すると紅卯月が呼んだ。

「早坂黄太郎。貴方に逝き先を宣告しに参りました。」

その声に気付き慌てて青羽は駆け寄る。
そして紅卯月と並んで柵越しに檻に入ったその男を見る。

こいつが…僕を刺した男……


すると早坂黄太郎がこちらを向いた。

「だっ誰だお前ら!何の用だ!」


「!?」
これは…僕たちに話し掛けているのか!?
人間に僕たちの姿は見えていない筈なのに…

不思議に思い紅卯月の方を見た。

すると
「この男にだけは私たちの姿が見えています。標的ですもの。」
紅卯月が男の方を向いたまま言った。