「これは…羽根?僕は今…空を飛んでいるのか…?」

信じ難い光景だ。

人間が空を飛ぶなど。


「貴女には羽根を授けました。
名前…青羽の名前にぴったりでしょう?その碧い羽根。」
にっこりと笑って紅卯月は言った。


「はは…なんか………」
呆気にとられその先の言葉が見つからない。

また衣服も病院の寝間着から、紺色の丈の長いコートの様な物に変わっていた。



「その羽根は死神の仕事をする際の移動手段として使って下さい。
また、衣服は仕事着です。
さ、早くこちらです。」

紅卯月は羽根が無い変わりに、金団雲のようなふわふわした雲の上に腰を降ろしている。
そして青羽の前をスーッと横切り目的地に向かう。

その後を追う様に青羽も行く。

羽根の操作は至って簡単であり、
四肢を動かすのとそう大差は無く、脳で思った通りに働いた。


夜空を飛び続ける事10分。

初めて空から見る地上と肌に感じる風と宙に浮いている自分に新鮮さを感じていたのも束の間。

紅卯月が言った。
「降りますよ」

二人は降下した。
そして着いた先、それは普段訪れた事の無い場所。
いや、大抵の人間は訪れたく無いだろう。

刑務所だった。