紅卯月が言った。

「大方、死神と言えば悪い印象しか与えていないのでしょう。
しかし実際は、魂を天国へも導けるし地獄へも墜とせる。
言わば、天使と悪魔の共存体なのです。
そして文字通り、死神、なのです。
死を操れる神なのですから。」


ここまで聞くと青羽はなんだか落ち着いて来た。
そしてその話も半信半疑ではあったが、聞き入れる事にした。

「……それで、具体的に僕は何をすれば良いんだ?」

自分は今、こんなSFのような話の主人公的立場なのだ。
役目もしっかり聞いておかねばならない。


「簡単です。ターゲットは私が指示します。
その方の死後の運命を決めてください。」

紅卯月はそう言うと病室の窓を開けた。

「口で説明するより、先ずは実戦した方が早いでしょう。
さ、行きましょう」


差し延べられた手を徐に掴むと
グッと引っ張られ、窓から身を投げ出した。

此処は4階。
落ちれば怪我をする、当たり所が悪ければ重傷になるかもしれない。

そんなことを一瞬のうちに青羽の脳を過ぎった。

途端、
バサッと言う音と共に
フワリと体が宙に浮いた。

「えっ…?」

横目で見ると、大きな羽根の様なものが視界に入った。

喩えて言うならば、天使の羽根。

しかしそれは真白な羽根では無く
碧くどこか切ない色をしていた。

それは夜で辺りが暗いせいなのか、
はたまた月明りに照らされてなのかは定かでは無い。