―土曜日―



私は1人、歩いていた。





陵の家へと、

向かっていた。






もう、

何にも考えずに。





そして、

「着いた……。」



私は

ごくごく普通の

どこにでも有りそうな

一軒家に、突っ立っていた。





私はゆっくりと

インターホンへと、指をのばす。




ピーンポーン……




「はーい。」

陵の声だ。






「陵っ。……美花だけど。」

私は少し間をあけて、

自分の名前を、言った。



そして

少し間があき、

陵が返事をした。


「……美花…。ちょ、ちょっと待ってて!」


陵はそう言うと

すぐ、ドアを開けて出てきた。



「美花っ!どうしたぁ!?」

陵は少し驚いた表情で、言った。



「………。」

「……美花?」

「陵のせいじゃないよ。」

「……え??」

「あの教科書は、陵のせいじゃないからっ!」

「……美花ぁ。ごめんな。
俺、あの時、どっか行っちまって…。」

「……ううん。」

「俺、なんとなく、あれ書いた奴わかってたんだ。
俺に引っ付いてきてた、あんな事やりそうな奴、すぐ思い付いたし。
……で、あの時、俺、あいつらに『もうやめろ』って言ってたんだ。
多分もう大丈夫だよ。
……いや、
俺が守るから、
絶対大丈夫だ。」

「……ありがと。」

……どうしよ。

涙が溢れてきた。


「……美花っ!!だから本当ごめんなっ!
な、泣かせるつもりじゃなかったんだけど……。」

陵は、明らかに慌てている。



「ううん。もう……大丈夫だよ。」

私は涙を隠すように、笑った。



それを見た陵も、少し笑っていた。