「なあ」

「ん?」



静かだった教室に俺の声が響いた

川本は顔を上げる



「なんで、あの女・・・大智ってみんなに親しまれてんの?」

「あっそんなこと・・・?智ちゃん。大智幸恵(おおともさちえ)クラスのムードメーカだよ?」

「・・・ぽいな」

「智ちゃん、クラスの輪に入れなかった私を入れてくれたの」

「それだけで?」

「もっとあるよ!中津」

「今日、俺のこと殴ろうとした奴?」

「そう。中津は最初荒れてたんだけど、智ちゃんに会ってから変わったの」

「あいつ、そんなすごいんだ」

「ある日、中津がぼこぼこに喧嘩して殴られた時、それみた智ちゃんが言ったの」

「なんて?」

「その傷は痛いかもしれないけど、その姿を見た中津の親や仲間はもっと苦しい傷を負うんだよって」

「なにそれ」


俺は少し笑った

そしたら川本が真面目な顔で言った


「つまり、心の傷ね」

「・・・ふーん」

「心の傷は治るのに時間がかかるって智ちゃんが言ってた」

「何様って思わなかった?」

「全然」

「変わってる」

「変わってるのは櫻井君でしょ」

「は?」

「みーんな、櫻井くんと仲良くしようとしてるのに」

「・・・お調子者すぎるんだよ・・・俺そうゆうの無理」

「あっそ」