「夏実? どうかした?」
夏樹の腕に顔を埋めていたあたしが、急に顔を上げた。
「今。 明菜の声が聞こえた…」
「え……?」
「微かだったけど。 明菜の声がした…」
「何て?」
「分かんない…でも、なんかメロディーだった。 歌、歌ってた…」
今も、微かに聞こえてきてる。
この歌は……
―好きになりすぎちゃダメ
分かってはいるのに
でも好きなんだもん
本当はあの日の夜
あなたと逢いたかったの
恋人つなぎしたり
熱くなった唇に触れたり
それが叶わぬ夢でも
せめてあなたと
笑い合うくらいしたかった
「『I trust』だ……」