―♪――♪――
その時、あたしのポケットで携帯が鳴った。
この曲は…明菜だ。
「はいはーい。 夏実だよー」
「……っ…なっ…つみ……」
「明菜?」
電話の向こうの明菜は、明らかに泣いている。
「ちょっと明菜? どした? 今どこ?」
「中田祇園の橋の前……」
中田祇園の橋の前?
それって遠くない?
「何でそんなトコにいんの……?」
「……大輔と…別れた…から…」
え……?
なんで?
「ちょっと待ってよ! 今からあたし行くから!」
「いーの来なくて! ……あたしもうヤダ…」
そして携帯を落としたかのようなゴトっという音の後、明菜の声は聞こえなくなった。