「今日…は…お別れに…来た…んだ……」
唐突にあたしが震える声でそう言っても、やっぱり絢は動じなかった。
『あ、そう』とでも言いたげな顔。
「あ、そう」
ホラね。
あ、そうって、そんなレベルの女だったのかな。
いついなくなったってどーでもいい、そんな女だったのかな。
あたしは下唇を舐めるように噛んだ。
「…それだけ?」
「ん。 あ。 それだけじゃイヤだ? 俺に引き止めて欲しかった? 嫉妬とかして欲しかった?」
「そんなんじゃないっ!」
あたしは思わず大声を出して席を立った。
周りの人達がみんなあたしに注目してる。
そんなんじゃない。
そんなんじゃないよ。
だからこれ以上、あたしの消そうとしてる気持ちを掻き立てようとしないで。
消したくても消えてくれない、あんたへの想いを、掻き立てようとしないでよ。