「何がだよ」
絢は少し間を開けて、それからふっと笑った。
「いや…アンタには、色々と迷惑かけちゃったかなって思って…」
あたしもちょっと笑うけど、それはもちろん心から笑っている訳じゃない。
「迷惑?」
「うん、いっぱい勝手な事してきた…」
「別に? 彼氏いる女なんて、そんなモンだろ? 俺も分かってるから」
「それでも」
「俺も悪かったよ。 俺のせいで色々トラブっただろ? ごめんな」
絢がカン、とグラスをテーブルに置く。
「ううん…。 でも…今日は…」
今日は。
お別れに来たの。
そんな事、言えるハズない。
あたしは唇を噛む。
絢も、なんとなく空気を読んだのか、手を止めた。