女性はちょっと顔をしかめたあと、こう言った。
「それが分かんないんですよねー…あたしも気になるんですけど」
「分かんないの?」
いきなり明菜が横から割って入ってきた。
っていうか…
『分かんないの?』って…さすが気の強い明菜のセリフ。
あたしなら、初対面の人にそんなこと言えない。
「す…すみません…。 たぶんナツだとは思うんですけど。 ボーカルの…」
もう女性は泣きそうになってしまっている。
「ボーカルのナツって? カッコいいの?」
明菜が怪訝そうな顔をした。
「はい! あたしはナツが一番好きです!」
その女性は、パアッと顔を赤らめる。
「どんな曲があるんですか…?」
「たくさんありますよ、もうずっと活動してるんで。 あたしが好きなのは、『メゾピアノ』ですけど…」