「良かったねー。 夏実まで殴られなくて。 男ってカッとなるとワケ分かんなくなるけど、さすが夏樹くんだね」


今あたしは、明菜と前も来たカフェに来ている。


「え……うん。 そうだね」


「でもお互い想い合ってるねー。 羨ましーわぁ。 だって別れ話なかったんでしょ?」


「うん…」


そうか。


確かに。


あたしはあの時、夏樹と別れたくなくて必死だった。


もしかしたら…夏樹もそうだったのかな。



「それにしても…夏樹くんがバンドやってるなんてあたし知らなかったよー!」


「んー…。 あたしも前言われた気がするけど、忘れてたもん」


「で? 何? ギタリストなの、彼は? それともボーカル?」


テーブルの向かい側から、ずいと明菜があたしに詰め寄る。