「だったら何で夏実が泣いてんだよ!」


夏樹は絢の胸元を掴んで揺さぶった。


「違っ……夏樹! 本当に…違うから…あたしがちゃんと話すから……」


絢を掴んでいる夏樹の腕をあたしが掴むと、夏樹が悲しそうな顔であたしを見た。



「話があんなら、後で聞く。 …それまで俺は、まだ夏実を信じてみるから」


そう言って夏樹は、あたしの手に2枚の紙を握らせた。


「……何、これ?」


「今度のバンドフェス。 絶対来いよ。 フェス終わったら、裏で待ってるから」


それだけ言うと、夏樹はあたしに背を向けてバイバイ、と手を降った。



あたしはそんな夏樹の後ろ姿を見つめていた。