夏樹の顔を見た瞬間、また涙がぶわっと溢れて、夏樹を取り巻く世界が一気に歪んだ。


「夏樹ぃ……」


きっとそれは、絢といた罪悪感とか久しぶりに夏樹に会えた嬉しさとか


そんな色々な感情が混ざってたと思う。


「てめー何してんだよ……」


そんな夏樹の声に、現実に戻されたような感覚が生まれた。


「違っ……あたし…っ」


『ごめん』なんて言葉を出したらそれこそ終わりだと思い、あたしは涙ながらに訴えた。


「夏実に聞いてんじゃねー。 てめーだ!」


その瞬間、夏樹が絢に飛びかかったのが分かった。


夏樹が拳を上げた風が顔にあたる。


――ヤバイ。


頭は朦朧としていたけど、瞬時にそう悟った。


だいたい、こんなに夏樹が大声出した事なんて今までなかった。


ましてや、手をあげるなんて。


あたしは力の限り叫んだ。



「やめてーっ!!」