そんなあたしの肩を、絢はそっと抱き寄せた。


抵抗する気にもなれなかった。


足の力が抜けて、立ってるだけでも大変だったから、あたしは絢に身を任せてた。



「……夏…実…?」



その時後ろから聞こえた声に、反応せずにはいられなかった。


しばらく聞いていなくても、忘れられずはずがなかったから。


あぁ。


何日ぶりだろう。


あたしは他の男に肩を抱かれながら、そんな事を考えていた。


だって、どう考えても現実味がない。


なさすぎる。


あ、そうだ。


あたしが嘘をついた日以来だ。


こんなにもいとおしい声で名前を呼ばれるなんて、なんて心温まる幸せなんだろう。


「夏実……」


もう一度呼ばれた失望の声にあたしは顔を上げた。


まだ涙は止まっていなかった。



「…夏樹……」