「うん。 知ってるけど?」


絢は当たり前じゃん、という風に肩をすくめた。


「……はぁ? じゃあなんで?」


「彼氏いる女の子ってフェロモンスゴいじゃん? だから落としちゃうんだよね」



……意味が分からん。


しかも『落としたくなっちゃうんだよね』とかじゃなくて


『落としちゃうんだよね』って……


そーとー自信あるんだ。


あたしはなぜか背中に悪寒が走ったのを感じて、ブルッと身震いした。


「京子ちゃんも、彼氏いるもんね? 夏樹クンだっけ? だからますます燃えちゃって」


何言ってんだよ、会社員が。


あたしは呆れて言葉を失った。


ただそこで立ち止まっていた。


でもだんだん、悔しくなって、バカらしくなって。


「あたしをこれ以上悪者にしないでよ…」


気付けばあたしはそこで立ったまま泣いていた。