「ねぇ、待って」
「んー? 何ー? ヤル気にでもなった?」
絢はおどけた様子であたしを抱き締めようとした。
「そうじゃなくって!」
あたしはまたその手を無理やりほどく。
「何だよ、何ピリピリしてんの?」
「ねぇ」
今度はあたしが絢の腕を掴んで立ち止まらせた。
「やめてよ」
「何を?」
「だから、そういうつもりであたしを連れ出して来たんなら」
「そういうつもりって? どんな?」
「分かってるでしょ?」
とぼけ続ける絢にだんだんとイライラしてきた。
「あたしは、夏樹が好きだよ…」
あたしは絢の目をまっすぐ見て言った。