「分かんない? …分かんないよなぁ。 んじゃお先に」
そう言って、その男性はスタスタと行ってしまった。
あたし1人だったら追いかけたけど、今は夏樹と一緒だもん。
彼女が自分じゃない男追いかけてるのなんて、見たくないよね。
そう思って夏樹を見上げた。
「なーに泣きそうな顔してんだよー」
「泣いてないもん……」
夏樹がポンポンとあたしの頭を叩いた。
だって……
どうしよう。
浮気相手だって思われたりした?
いや、でもそれはないかな。
でも、絶対ヘンだと思われた。
だって、あたしが夏樹でもおかしいと思うもん。
でも……
でも…
「浮気相手とかじゃないよ? ホントに知らない人だったんだよ?」