アイツの思うツボになるのは悔しかったけど、あたしはバーに向かっていた。
詳しい場所はやっぱり分からなかったから、タクシーに乗り込む。
「『Mr.シャマン』までお願いします」
確か、『Mr.シャマン』だと思っていた。
運転手のおじさんが頷くと同時に、ほっと胸を撫で下ろす。
Mr.シャマンへは、10分弱で着いた。
深海絢は、ヒロミさんを、常連だと言っていた。
だったらヒロミさんはいる可能性が高い。
手帳のことを、何か知っているかもしれない。
まず入ったら、どうすればいいんだろう。
ヒロミさんいるか見てみよう。
ヒロミさんの本名は、何ていうんだろ。
色々な考えや思いを巡らせながら、あたしはMr.シャマンの重いドアを押し開けた。