明菜の提案に、あたしは初めて顔を上げて、鞄を手繰り寄せた。


鞄の中の手帳を見て、予定を調べようとしたから。



「あれ……? ない……」


なのに、手帳がなかった。


鞄の中に、手帳は入ってなかった。


「手帳?」


明菜はあたしが何を探しているのかすぐに分かったらしかった。


「うん…」


「夏実、その手帳って…夏樹くんに買ってもらったやつじゃないの? 去年の誕生日に」


「うん…」


そう。


去年の暮れ、夏樹があたしに誕生日プレゼントとしてピンクの手帳をくれた。


その手帳が気に入って、用もなく毎日のように眺めていたのに、それがない。


よく記憶を辿ってみると、そういえばここ数日見ていなかった。



「あ……」



最後に見たのは、あの日だ。


深海絢と、あのバーに言った日。


あたしが夏樹に


嘘をついた日。