ボト。


「あ……」


あたしは、手から滑りむなしく地面に落ちたグレープフルーツをぼーっと眺めた。



「ちょっと夏実! アンタ本当に大丈夫!?」


すかさず隣にいた明菜が、あたしの肩を持って揺さぶる。


「大丈夫だよー。 ちょっと落としただけじゃーん。 明菜ってば心配性だなー」


明菜を安心させるように無理やり目尻を下げて口角を上げた。


その無理な笑い方が逆に心配になったのか、明菜は泣きそうな顔であたしを見た。


「ねぇ、夏実。 言いづらいなら、あたしから言うから。 ちゃんと責任持つから…」


もう明菜は泣き崩れる寸前で、声と肩が震えていた。




あたしはあの日、夏樹に……




嘘をついた。