大学の中の噴水で、あたしたちはいつも会う。
そこはすごくキレイなのにあんまり人目もなくって。
今日ももちろんそこで夏樹と会うはずだった。
それで『待った?』とか、『どこ行く?』とか
そんな他愛もない会話をして。
あたしのアパートとか夏樹のアパートとか行ったり
どっかでお茶したり。
でも今日は、あたしは深海絢の乗った車を眺めて、それから目が離せなかった。
「アレ? 夏実チャン? …何してんの? こんなトコで」
いきなり背後から声をかけられたあたしは、びっくりして慌てて振り向いた。
「あ……相田さん…」
あたしの後ろであたしを不思議そうに見ていた人は、夏樹の友達の相田道留(あいだみちる)サン。
そんなに親しい訳じゃないけど、夏樹と3人で話したこともあるし
人懐っこい犬みたいな優しい人。
「あー…今高級車が通ったんで、珍しいなって思って…」
あたしはヘラヘラと笑いながら適当にごまかした。