振り返る前、あたしの頭は高速回転した。
京子ちゃん?
この声。
このなんとなく軽いノリ。
あのV系バンドマンなはずがない。
こんな広い土地で、そんなに昨日も今日も出会うはずがない。
そう思いながら、ゆっくりと振り返った。
「やっ京子ちゃん。 昨日ぶりだね」
でた。
V系バンドマン。
あたしはその瞬間、出来る限りのハイスピードで歩き出した。
「えっ京子ちゃん無視? 俺別に怪しいモンじゃないよ?」
そのV系バンドマンは、当たり前のようにあたしの横を普通に歩いてついてくる。
じゃあ名乗れ!
心の中でそう叫んだ。