乱暴に椅子を引き、ドカッと腰を掛けて机に頬杖をついた。


何だか苛々する。


「全く…どーしたの…?」

千里が前の椅子に座って、顔を覗き込んだ。


「何だかね…腹立っちゃった」

「聞こえてたわよ。声デカイんだから」




「私…馬鹿みたい」

「そうね。でも美月の良い所じゃない?」

頭をポンポンと叩いて、千里は自分の席へと戻って行った。



『俺、ちゃんと見てるから』


嵐の言葉が、思っていたより重くて潰されそうだった。




本当は

私が

其処にいたい。





泣きたい気持ちを堪えて、1日の授業が終わる。



教室を出て千里と昇降口に向かっていると、

「雨宮!!」

と嵐の声が聞こえた。



振り返ると、ポケットに手を入れて偉そうに立っている嵐がいた。

「何よ」

「ありがとう」



右の口角をキュッと上げて、人混みに消えた嵐。


「ほんっとに奇妙よね」

千里が呟いて、先に階段を降りた。



『彼女には勝てません』



二人の繋がりの深さを、思い知った日だった。