嵐から返されたハンカチが、静かに、私を動かした…。


背を向けた嵐に、私は、声を掛けた。


「嵐!!」

左足を軸に、軽く振り向いた嵐。

「だから、声デケーよ」

「彼女!!守ってあげないと!!」

ゆっくりゆっくり、身体を正面に向けて、

「守ってるよ」

と優しく笑う嵐。


言いたいことが、伝わっていない様に思えて、ちゃんと話してしまいたかった。


「泣いてたんだよ…プリント拾いながら」




必死で訴える私は、どうかしてるだろうか。


私は嵐が好きなんだ。


好きなのに、彼女を助けて欲しかった。

嵐に、助けてもらいたかった。



「俺、ちゃんと見てるから。見てるけど、アイツが泣きつくまでは、俺も何もできねぇんだ」


何だか、無性に腹が立ってきて

「見てないじゃん!!」

「何でお前が怒ってんだよ」

「分かんないわよ!!」




嵐を追い越して、教室に戻った。

背中から嵐の声が聞こえたが、もう、無視してやった。


『何で私が彼女の心配してんの!!』


全く、この構図は何なんだ。