ある日の放課後。

職員室に日誌を届ける為に、階段を降りていたら、数段下の踊り場で、落ちて散らばった紙を一枚一枚、拾い上げている女の子がいた。


ふと見えた横顔は、嵐の彼女だった。


彼女の場所まで、あと少し…。

見て見ぬフリはできないけれど、嵐の彼女なだけに、私は悩みながら階段を降りた。



私の気配を察した彼女は、ふと、此方に目をやり

「ごめんね」

と笑って、急いで紙を集めだす。


ズキッと胸が痛んで、唇を噛み締めた。




私は彼女の正面に腰を降ろし、集めきれない紙を拾いだした。

「ありがとう」


彼女は満面の笑みを浮かべた。


が、


「紙落として泣いてたの?」


彼女の瞳は、確かに涙で濡れていた。


また誰かに嫌がらせをされたんだろうか…。



「階段で躓いちゃって」



穏やかな口調で、俯いたまま、彼女は言った。

「怪我はしてないの?」

「こう見えて、運動神経良いのかも」


集めた紙を彼女に差し出して、


「気をつけてね」

と、再び階段を降りだした。



「雨宮さん!!ありがとう」


名前を呼ばれて驚いた。


私を知っていたなんて。


何かが…

溶けてくのを感じて、振り返って笑った。