一度俯いて、足元の雑草を無造作に触る。


「何もねーよ」

「それならいいんだけど」

「心配してくれたのか?」

「ま、たまには大人しい方がいいからね」

「だから、笑わせんな」

「あ、これ」


私は千里と用意した誕生日プレゼントを、嵐に渡した。


「昨日の用事って…まさか…」

「そうそう!!これを渡したくてさ」

「…そか」

「勝手に計画立てたの私たちだし、気にしないで」

「開けていーか?」


あんまり高価にしても、嵐に気を遣わせるよね…と、千里と選んだプレゼントは、嵐が好きだと言ってたショップのTシャツ。


「…サンキュー」

「着れなかったらパジャマにして」

「いや、着るから」


いつもの笑顔。

解いたリボンを丁寧に小さくして、包装紙と一緒に箱になおした。



私たちには、これから先の二人の予定など全くない。

だから、こうしてプレゼントを渡せるのも、もうないかもしれない。

私は、そんな覚悟をしていた。


嵐からも、私からも、彼女の話を持ち出すことはなく、それでもお互いに、意識の中では強く存在している。


「お前の誕生日は?」

「何かくれるの?」

「お前にはジュースだけどな」


むうっとした私を覗いて、


「教えろよ」


と笑う。