「お前、今日空いてるか?」

「ん?何で?」

「埋め合わせだよ。空いてるなら、俺がお前の地元へ行くよ」


空いてる。
めちゃくちゃ空いてる。


「う…ん。分かった」

「分かったって何だよ。返事になってねぇし」

「あ…空いてるって意味」

「じゃあ、夕方にな」


期待したくないのに、期待してる自分がいる。
実際、嵐の言葉に舞い上がって、人目など気にしていなかった。


「嵐、何て?」

「埋め合わせで、今日、私の地元まで来るんだって」

「えらく早い埋め合わせね」


千里は笑って、私の胸をつつく。

こんな光景を、冷ややかな目で見る女の子が増えているとも知らず、私は冷静さを見失い始めていた。


一日の授業が終わり、いつもと同じ電車に乗った。途中、嵐からメールが来て、着替えてから来るとのことで、私も着替えに家に戻った。

携帯片手に家の中をウロウロし、嵐からの連絡を待つ。

何度も何度も鏡で髪を確認し、千里からのメールに返信していると、嵐から電話が来た。