「おはよう」


昇降口で靴を履き変えていると、背後で声がした。
振り向くと、嵐の彼女が笑って立っていた。


「あ…おはよう」


私は勿論、嵐のことを考えていたので、白々しい挨拶っぼくなった。


「体育大会の次の日は、休みにして欲しいね」


彼女はそう言って、教室へ向かう。
私も後を追うように教室へ向かうが、彼女の姿から目が離せない。

本当は、昨日何があったのか聞きたい。
彼女に聞けるなら、聞いてしまいたい。


だが、聞けない。


私の行動が、嵐を苦しめるかも…と思うと、喉まで出てる言葉も飲み込んでしまう。

教室に入ると、千里が私を待っていたようで


「嵐から連絡来た?」


と、腕を掴んで聞いてきた。


「うん…ありがとう」

「何で?」

「嵐に番号言ってくれて」

「約束だったからね」


机に鞄を掛けて、千里の席で筋肉痛を嘆いていたら


「雨宮!!」


と、嵐の声がした。
顔を上げて嵐を見ると、手で私を呼んでいるので、嵐の元に向かった。


「昨日は夜中にスマン」

「元気そうじゃん」

「は?俺はいつも元気じゃんよ」

「時々、ウザいくらいね」

「朝から笑わせんな」


口角を上げて強気に笑う嵐は、昨日の雰囲気など背負っていなかった。