『待つ』という行為は、一分一分に試練を与えている。

私の気を紛らわせようとする千里の話も、まともに聞けない程、全神経が『待つ』に集中していた。


「大丈夫?」

千里の声に笑顔で答えたつもりが、全く笑えていなかったようで、千里は苦笑いで肩を叩いた。


きっと、彼女から離れられないんだ。


きっと、彼女が離さないんだ。


きっと。



「もう一回電話するよ」



千里が携帯を開く。

私は隣にいながら、それを遠くで見ていた。


「あれ?嵐からメールが来てる」



嫌な予感。

嫉妬が吹き荒れそうな予感。



「今日は無理だって!!何よ今更!!」



今日一日で感じた彼女の視線が、今の結果に繋がったと思った。
別れたわけでも、別れるわけでもない二人。

約束が流れたって仕方ない。

そこを責める立場ではない。


「そっかぁ…揉めてなけりゃいいんだけど」

「美月、あっさりしてんねぇ…」

「だって、今日は嵐の誕生日だし…」

「プレゼントはまた今度だね」

「だね」


付き合ってくれた千里にお礼を言って、私は家に戻った。


ご飯を食べる元気もなく、お風呂に入った後ベットに直行した。



『はぁ…』


溜め息は何処へ行くんだろう。

無機質な天井を見ていたら、自然と眠りに就いていた。