駅までは、歩くと30分はかかる。

元気なら何てことない道でも、文化祭後の疲れた体じゃ、一歩一歩が重い。


「あ~バスぅ…」


嵐が項垂れて言う。


「並んで乗れば良かったのよ」


千里の冷たい言葉。


「此処まで来たら歩くしかないんだし」


私の追い打ち。


「お前ら…冷てぇな…」


更に項垂れる嵐。



何台のバスに追い越されたのか、バスが通る度に嵐はブツブツ言っている。


「全く煩いわね!!」


私たちは声を揃えて嵐を睨む。


「俺はライブやったんだぜ?」

「知らないわよ…アンタがバス待てなかったんでしょーよ」

「ライブ見た?」

「見たよ…ファン増えそうね」



嵐は最高だった。

惹き付け方を知っているかのよう…。


「罪な男だぜ俺って」

「馬鹿な男」


駅に着いて、方角が同じ二人と別れ一人で電車に乗った。


向かいのホームで手を振る二人に、手を振り返して、嵐の笑顔にありったけの笑顔を送った。


『好きよ…嵐』


サヨナラみたいだった。