「嵐のライブは見る?」

繋いだ手を千里は離すことなく、私に尋ねた。


「…見れるかな」

「見ようよ!!見ないと後で煩いよアイツ」


責められてる光景が想像できて、クスクスと笑った。


「美月の気持ちは分かるから」


笑ったまま千里に目をやり、繋いだ手に力を込めた。


「ありがとう」

「嵐に泣かされましたコンビね」




嵐のライブは、思ったより辛いライブだった。

ギターを弾くあの腕。
ネクタイをしめた胸元。


其処にいた彼女。


覚えたての二人の姿が鮮明すぎて、



…嵐が遠い。



ライブ後、文化祭の片付けが始まる。


「終わりは寂しいね」

「ホント…」


丁寧に仕上げたポスターも、段ボールで作った看板も、見事に役目を果たし、ゴミの山となる。


担任の先生が差し入れにと、ジュースを用意してくれていて、最後の最後に歓喜の声が上がる。



学校を後にして、バス停でバスを待った。

全校生徒が一気に帰るだけあって、さすがにバスは何台か見送らなければならなかった。


「みんな疲れてるから歩かないんだね」

「考えることは同じよね」


千里と笑ってバスを待つ列に加わる。


「嵐がいる…」


賑やかなバス停で、微かに嵐の声が聞こえた。