力が体から抜けて、あの光景と、あの言葉が、焼き付いた。


何処で終わりにしたら…

いつまで好きなら消えてくれるの…?



嵐を知って、名前を覚えた。

声を聞き分け、笑顔も覚えた。


嬉しさに満ち溢れた時間は、もう、何処にもなくて、知った喜びより、知った悲しみに包まれる。


これを『後悔』というのだろう。




「好きにならなきゃ良かった…」

「…美月」

「嵐を知ったことが、何よりも苦しいなんて…」



立ち止まったまま、踏み出せない足。

視界が潤い、小さな波が立つ。


「好きになろうと思って好きになったんじゃないでしょ?」


恋とはそんなものだ。


「きっと、強くなるチャンスを神様がくれたのよ」




最初から諦めた恋だった。

彼女のいる人に、何も求めない恋だった。


だが、

どこかで、求めていたのかもしれない。


彼女を差しおいて、嵐を求めていたに違いない。


逆の立場に立った時、一番疎ましい存在の私を、彼女は敵視することはない。


器の違い。


最初から、分かっていた筈なのに…。