屈めていた体を二人で起こして、彼女の作品を探す。

入り口すぐの高い壁を通過して、左に曲がった時、嵐の姿が見えて思わず後ずさりした。


「え?何?」

小声の千里に

「嵐がいるの」

と小声で言って、壁を背に二人で並んだ。


「私たち何で隠れてるの?」


確かにそうだ。


嵐の姿を確認しようと、壁からそっと右目を出す。

其処には、嵐の胸の中で、嵐に抱き締められる彼女がいた。


『ドクンッ』


痛いよ胸が…。

こんなの、隠れて見てる私は情けない。

見たいわけじゃないのに、見てしまった。


千里の隣で壁を背にした私は、千里の手を強く握った。


「どーしたの?」


そのまま手を引いて、書道室から出ようと足を一歩踏み出した時、嵐の声が聞こえた。



「俺がついてるから」



目を強く閉じて、
唇を噛み締めて、

逃げる様に書道室から出た。


足早に廊下を歩き、千里の手が私を引いて歩みを止めた。


「美月!!どーしたの!?もしかして彼女いたの?」




「…いた…嵐に…抱き締められてた」

「……美月」



「…大丈夫」


作り笑顔なんて、らしくない。

らしくないのに、笑うことしかできない。