『後悔しないように』

それがどんな生き方なのか、何を選んで、何を捨てればいいのか、それが分からない。

世の中は私一人ではない。

誰かが笑って、誰かが泣く仕組みなら、それは巡り巡って、自分の身にも起こる。



「いつか嵐に言えたら、それで充分」

「頑張ってね」



嵐を好きだった千里だからこそ、私を見抜けたんだろう。


千里が後悔に苦しんだことは明らかで、たったこれだけの会話で、胸の奥まで響いてきた。


1日目の文化祭は静かに終わった。



翌日、文化祭2日目。

この日は、嵐のライブがある。


「絶対見に来いよ」

煩くしつこく、嵐に言われた私たちは、ライブの時間まで興味ある出し物をまわった。


「ねぇ…書道部行かない?」

「うん!!行きたい!!」


きっと、嵐の彼女の作品がある。


私たちは人混みを掻き分けて、2階の隅にある書道室へと向かった。



他のクラスや、他のクラブの賑やかさが全くない書道室。

入り口の手前で、足音を消すようにそっと中を覗いた。


「誰もいないのかな…」

「…静かすぎるよね」


室内は、巨大迷路のように高い壁が並んでいて、その壁に作品が飾られていた。