入学して、初めての文化祭を控えた9月。

各クラスが出し物の準備で、放課後が賑やかになる。


授業じゃない教室は、それぞれの担当毎に、幾つかのグループに分かれ、色んな噂が飛び交っていた。


「雨宮さん」


私と千里はポスター担当で、構図を考えていると、教室の後ろのドアで、話したことのない子が私を呼んだ。


「何なの?あの子」


千里の心情。

私の心情でもある。


「…知らない」

「一緒に行こうか?」

「ん?大丈夫」


手にしていた消しゴムを
机に置いて、後ろのドアに向かった。


「ごめんね、突然」


化粧の匂いが鼻をつき、たっぷりのグロスが唇に乗っていた。

『化粧濃いなぁ…』

最初の感想。


「嵐と仲良いよね?」




何で嵐のことで私が呼ばれるんだ?



「仲良いって、何処までが仲良いって言うの?」

「よく廊下で話してるから」



『勘弁してよ』



ややこしい話は聞くのも苦痛。


特に嵐の話は。