「瑠璃」

名前を呼ばれただけなのに、ドキッとした。

あ…そう言えば名前で呼ばれるの、今日が初めてだ。

と言うか…。

「五十嵐も、人を名前で呼ぶ時があるんだ」

すると五十嵐は、
「あったりめーだろ?」
と、ちょっと挑発するように言った。

「好きな女の名前を呼ばねーヤツが、どこにいるんだよ」

「えっ?」

驚いて、聞き返した。

「五十嵐の、好きな女って…?」

五十嵐は呆れたようにため息をつくと、
「瑠璃だよ」
と、照れくさそうに言った。

こんな顔の五十嵐を見るのは、初めてだった。

意外な一面に、思わず笑った。

五十嵐は怒ったように、
「笑うなよ〜。

これでも恥ずかしいんだからよ」

「だって…」

いつもの五十嵐とは違う姿が見られて、嬉しいんだもん。

私って、幸せ者。

こんな五十嵐が、間近で見られるから。