「じゃ、飛行機に遅れるから」

そう言って、小田切紅花は背中を見せた。

「あ、そうそう」

思い出したかのように、小田切紅花が振り返って私を見た。

「頑張ってよ、紺野さん」

そう言ったかと思うと、小田切紅花はニッと白い歯を見せて笑った。

「じゃ」

クルッと背中を見せると、コツコツとハイヒールを言わせながら、去って行った。

小田切紅花――台風みたいな彼女の存在を、私は忘れないかも知れない。