小田切紅花を見ると、椅子から立ち上がり、五十嵐を見下していた。

「……何、したの……?」

私は聞いた。

小田切紅花はニヤリと口角をあげると、
「薬が、効いてきたみたいね」
と、言った。

く、薬…?

「媚薬って、ご存知かしら?」

小田切紅花が言った。

媚薬――その言葉の意味は、わかった。

「あなたたちが外に出ている間、彼の紅茶の中に入れてあげたの」

それを、五十嵐は飲んだ。

「………うっ………」

悶(モダ)えているのか、五十嵐の口からはうめき声がもれている。

震えが、さっきよりも増したような…。

「これで、彼は私のものよ」

小田切紅花が勝ち誇ったように笑った。

その顔を見たとたん、私に怒りがこみ上げてきた。