「待て」

五十嵐に腕をつかまれた。

「社長命令だ。

今すぐ乗れ」

「はあ!?」

聞く時間を与えないと言うように、私は強制的に乗せられた。

「ちょっと!

何すんの!?」

「しゃべるな、舌噛むぞ」

五十嵐がアクセルを踏んだ。

「きゃあ!」

躰が前のめりに揺れた。

乱暴って言うくらいの運転。

目を回すんじゃないかってくらいの早いスピード。

私、死んじゃうんじゃ…?

ちょっと待って!

これ完全に誘拐だよね!?

私、どこ連れてかれるの――――――っ!?


「ついたぞ」

あまりにも早過ぎるスピードに目を回していたら、五十嵐が言った。

二日酔いしたような感じを覚えながら、私は車を降りた。

う〜っ…。

めまいと吐き気が…。

潮の香りがした。

顔をあげると、目の前に大きな海が広がっていた。