「あんた…最ッ低…!」

怒りがこみあがってくる。

「最低で結構だ」

五十嵐はニヤリと笑った。

「それが社長の権限っつーもんだからな。

俺の気まぐれだろうと何であろうと、お前は秘書だからな」

一発殴ろうと手をあげた時、
「おっと、同じ手には2度と引っかからねーって決まってんだ」

手をつかまれた。

パン!

乾いた音がしたのと同時に、つかんでいた手が離れた。

「同じ手には、引っかからないんじゃないの?」

頬を押さえる五十嵐。

「社長の許可だろうが何だろうが、今日限りで辞めさせてもらいます!

短い間でしたが、お世話になりました!」

そう言って、早足に五十嵐の前を去った。

社長の権限だろうが何だろうが、もう知らなかった。

だって私は、奥さんじゃないんだもん。

代わりじゃないんだもん。