「別に、ヘタクソって言っただけだろ?」

しらばっくれるように、男が言う。

その態度に、わたしは感情的になりそうだった。

「言っていい場所と、悪い場所があると思いますが」

私の言い分に、男は勝ち誇ったように口角をあげた。

「何が、おかしいのですか?」

すると、男はウイスキーを口に含んだ。

「んっ……」

一体、何が起こったのかわからなかった。

男の唇が、私の唇と重なっていた。

離れないように、後ろから頭を押さえられる。

周りは、ジャズに夢中と言うように、私たちの行為に気づいていない。

キスは、濃厚なものに変わって行く。

舌と共に、ウイスキーが口の中に入ってきた。