「奥様がお亡くなりになった時、雄平坊ちゃまは深く悲しんでおられました」

その時から、五十嵐は荒れた。

仕事だと称して女を抱き、酒を倒れるまで飲む日々が続いた。

愛する妻を亡くした五十嵐は荒れに荒れ、狂って行った。

「大荒れになった雄平坊ちゃまを、誰も止めることができませんでした」

妻を亡くしてから1年後。

急性アルコール中毒で、五十嵐は病院に運ばれた。

生と死の間をさまよいながら、ふっと思った妻の存在。

自分は、今まで何をしていたのだろうと。

自分の荒れた姿を見て、1番悲しむのは、最愛の妻。

そう思った五十嵐は、再生した。

「雄平坊ちゃまはまた働き始めました。

けど、女の方とご関係を持つことはありませんでした」

山田さんは話し終えたと言うように、口を閉じた。

「これが、全てのことです」

私を見ると、山田さんはため息をついた。