小田切くんはいつも通りの怒ってるような表情で私を見ていた。
なんか……睨んでるようにも見える。
ヤバい、どうしよ……。
骨折られる!!!!!
「お前……」
小田切くんがジリジリと近付いてくる。
ヒ……ヒナだけでも守らなきゃ……!
私はゴクッと息を呑んで、ヒナを乗せている手を後ろに回した。
小田切くんは相変わらず眉間にシワを寄せたまま近付いてくる。
そして、ぐっと私の腕を掴んだ。
「貸せ」
「きゃ……ッ!」
小田切くんは引っ張った私の手からヒナを奪った。
小田切くんの大きな手の中でピーピー騒ぐヒナ。
ど、どうしよう……!
ヒナが……!
ヒナが握り潰されちゃうよーッ!!!
「いやああああああ!
やめて─────ッ!
潰すならその子じゃなくて私を……」
……って言い終わる前に、思いがけないことが起こった。
なんと、小田切くんがヒナを優しく握ったまま木を登り始めた。
小田切くんは軽々と木を登って、あっという間にてっぺんに着くと、ヒナを巣の中に帰してあげた。
「もう落ちんじゃねーぞ」
木のてっぺんから微かにそんなセリフが聞こえた。