「綺羅の目には、何が映ってるの?

 『今』が映ってる?」

あたしの目には桜の木と雅の残像

それから十雅の真剣な顔が映っている

…今のあたしには『感情』がないんだ

なくなったんだ



違う…捨てたんだ



だから今のあたしは人間じゃない



心臓が動くだけの人形



だからあたしは

「映ってるんじゃないかな…」

なんて曖昧に、適当に答えた


すると十雅は寂しそうな顔でこう語り始めた

「…俺さ、双子の兄貴がいたんだ

 でも、病気でこの間死んでさ

 兄貴な、病気でもう長くないって宣告されたとき

 死んだような目して俺に『死ぬんだってさ…俺…』って言ったんだ

 今の綺羅の目、あん時の兄貴の目とよく似てる」