ひたすら私の思考は、いつもと違う美咲の服装にばかり向かう。
いきなり美咲がこっちを見た。

「あんた今日の合コンどうすんの??」

合コン??
記憶にない。
そんな約束しただろうか。
基本的に約束したことは忘れないようにしている。
いくら考えても思い出せない。
美咲を見つめたまま反応に困ってしまう。

「あれ??言ってなかったっけ??」

「私は記憶にない。ちなみに昨日の午前中までの記憶はあるからね。」

美咲も正確ではないようだ。
典型的なAB型の美咲はいつも適当でA型の私をうろたえさせる。
まぁ自覚はないようだが。

「今日はねーA大法学部と合コンだよー。どんながり勉野郎が来るか楽しみだね。」

A大と言えば私が落ちた大学だ。
自分の口の悪さにも自覚はないのだろう。
にこにこと笑っている。

「私はパス。めんどくさいし、がり勉にも未来の弁護士にも興味なし。明日はバイト入ってるし、昨日の記憶も掘り返さなきゃいけないしね。」

諸手を上げて立ち上がると、服を引かれてまたソファーに沈んでしまった。

「ダメ。私は今回本気なの。私が失恋したの知ってるでしょ??新しい恋で忘れたいの。」

真顔なのが恐ろしい。
失恋の話は聞いた覚えがないが面倒なので放置する。
もはやこうなった美咲を止めることはできない。
今度は降参の意味で両手を挙げた。

「行かないなんて言ったって無駄でしょ。とりあえず、その服似合わないよ。本気なら着替えた方がいい。」

美咲は諦めた私にニヤリとした笑顔を見せた。
自覚は…ないと、思う。