駅に向かい歩きだした所で根本的に知らないことが多すぎると気づいた。

「どこで、何時に、メンバーは??」

いきなり腕を握って立ち止まったので、びっくりしたようだ。

「うおぉ!びびった。渋谷だよ。涼子が前バイトしてた居酒屋わかる??6時にそこ。メンバーは涼子と馨。」

驚き方がヤケに男前なのはおいといて、メンバーが有り得ない。

「涼子と馨って!最悪だよ!絶対陥れようとするよー。あんた本当に本気なの??」

涼子と馨はK女子大学の学生らしい。
が、なぜかM大のサークルにいた。
私は美咲の付き合いでいっただけだったが、合同サークルでもないのに平然と「K女子でーす」と挨拶をするのには驚いた。
この二人は男と女の前ではまったく態度が違う。
俗にいう二重人格というやつらしい。
まぁ、それは私には関係ないし、別段問題ないと思う。
問題は奴らが合コンやらで使う小技だ。
自分より可愛い子がいたら貶めるという必殺技があるらしい。
控えめに見ても確実に美咲の方が2人よりも美人だ。
必然的に必殺技を繰り出してくるだろう。
だいたい、いつ知り合いになったんだ。
当の本人はこっちの心配もよそに楽しそうにニヤついている。

「楽しみだよねー。」

楽しんでどうする。
本気で相手を探すんじゃなかったのか。

「あんた奴らの必殺技知ってる??」

「知ってるよー。だから楽しいんじゃん。自慢じゃないけど、私はあの二人よりはキレイな自信あるし、有里も美人さんでしょ。どういう反応とるのか楽しみじゃない??」

ってことは二人は私が来ることはしらないのだろう。
さらに言えば、美咲が楽しみにしてるのは合コンではなく、涼子と馨の反応。
元々本気で相手探しというわけじゃなさそうだ。
まぁ、本人が楽しそうなんだしいいだろう。
軽く溜め息を吐いて再び歩きだした。