洗面台の鏡で髪を整えた。

「ほら、行こ。」

部屋のドアを開けると、美咲はさっきと同じ場所で立ちすくんでいたようだ。
私の声にハッと顔をあげ、安心したような笑顔をうかべた。

「はいはい。」

そう言ってバッグを持って部屋を出た。
美咲は本当に良い奴だと思う。
私のことを自分のことのように考えてくれる。
その上で、私が問い詰められたくない時には決してしつこくはしない。
私と美咲を知っている人は大概、私がしっかり者で、美咲を助けているように思うようだ。
しかし、美咲はいつも適当であまり考えていないように振る舞っているだけで、本当は私なんかよりも遥かに思慮深い人間だ。
自分の気持ちを口に出すことを何より嫌い、違う自分を装うことでしか人格を保てない私にとって、美咲は最高の理解者なのだ。
いつも助けられているのは私の方だ。