小さい頃から『こだわらない性格』を装うのは得意だった。
高校受験の時も浪人が決まった時も
「こうなったものは仕方ない。いい経験だ。」
そう笑いながら言った。
実際、そこまで思い詰めることもなかった。
しかし、大学は違う。
大学が最終学歴だ。
『学歴社会は終わりだ』なんてだれが言ったのか。
学閥がはびこっている企業は少なくない。
そんな社会で私は1流に成り切れない大学卒として生きなければならない。
『もし、あの時受かっていたら』
私の一生のうち何度そう思うかしれない。
学歴は実力で超えられる壁なんかではない。
A大学の学生にその気持ちをぶつけることはお門違い。
そんなことは分かっている。
それでも、他に自分の気持ちを精算する方法が見つからない。
この気持ちを知っているのは美咲だけだ。
親にも先生にも友達にも笑顔で
「M大学だっていい大学だもの」
と言った。
美咲にも直接言ったわけではない。
それでも私の態度や仕草で気づいたのだろう。